2008年11月
特定非営利活動法人 日本ウェブ協会 理事長 森川眞行
製品カタログやパンフレット、会社案内といった告知媒体。これらの代替物としてウェブは広く普及しました。また、ツールとしてネットショッピングなどによる実際の収益事業も登場し、商品を通じての顧客とのコミュニケーションにおいてウェブの活用は、流通に大きな変革をもたらしています。
また、昨今の広告で見られるように「続きはウェブで」と言うキャッチフレーズは見込み客の顧客化などに向け、メディアとしてのポジションも確立したといえるでしょう。このようにウェブは今日、企業にとって営業所や支社・支店、あるいは本社機能と同等の役割を担っていると言われています。もはや企業にとってビジネスの背骨を支える重要な手段と言えます。
刻々と変化する社会において、企業の価値も財務諸表のみでは判断できない時代になりました。CSR といった社会的責任への姿勢も含め、多くのステークホルダーとのコミュニケーション実現が企業における課題であり、今後のウェブの大きな役割であると考えます。
近年のステークホルダーの定義は狭義に限らず、コーポレートガバナンス、CSR、IR、リスクマネジメント、環境マネジメントといった諸概念の登場により、その対象は広がっています。かつ、企業が継続的に存続していくために、特定のステークホルダーに偏ることなく、それぞれの理解を得て行く必要があります。特にIR(財務広報)活動は経営者と投資家との対話の場であり、最初の接点としてウェブが活用されるケースが多いのは言うまでもありません。
このような状況から、広く対外的に企業活動の有益性をアピールするために、企業は、さまざまなステークホルダーを想定してウェブを構築・運用しなければなりません。
さらに、消費者として想定していた利用者が、瞬時に投資家や市民としてアクセスを行うといったステークホルダー立場の変化も念頭に置く必要があります。
ステークホルダーとのコミュニケーションを実現させ、企業の価値を高めていくには、常に利用者視点で必要な要素を欠かすことなく実装し、円滑な運用を継続的に積み重ねていくことです。すなわち、それが明日、あるいは10年後、100年後と言った「将来」への投資となります。
分かりやすさへの配慮を怠ったり、危機管理において運用面で迅速な対応を怠ると、24時間365日コミュニケーション可能という利点も宝の持ち腐れとなり、利益を損なう可能性にもなりかねません。
猛烈な速度で技術的進化を続けるインターネットの世界で、社会情勢を敏感に反映し、企業理念に基づいたウェブを運用するには、常にアンテナを張り巡らし、終わることのない努力を続けて行かなくてはなりません。そのためには、日常の運用担当者と専門家のコラボレーションが必須となり、そうした関係がプロジェクトに大きなパワーを生んでいくことになります。
サイト構築や戦略的運用には、スピードときめ細かい対応力が求められます。この要求に応えるには、企業側の、組織横断的なウェブへの取組みに尽きます。ウェブをプロジェクトパワーから、コーポレートパワーに昇格するための体制の鍵は、ここにあります。
ウェブが企業の本社機能と同一の役割を担うのであれば、戦略や情報の一本化は当然のことであり、ウェブを軸にした体制作り、IT 戦略などを行う企業が増えているのは、経営戦略実現のための当然の流れであると言えます。
日本ウェブ協会は、ウェブに携わるあらゆる企業や個人が、異業種の壁や競合の垣根を越えて活動を行っています。ステークホルダーとの最適なコミュニケーションを実現するには、ウェブサイトの所有者、制作者が同じテーブルにつき、課題を解決することが重要だと考えています。